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日 付 更新履歴・お知らせ・独り言・ぶつぶつ…のようなもの
16/12/10 「大魔王のお笑い神話(12月号)」をアップしました。
大阪自由大学通信12月号をアップしました。

16/11/26 旧著探訪第29回『イスラーム哲学の原像』(井筒俊彦著)をアップしました。

16/11/13
「大魔王のお笑い神話(11月号)」をアップしました。
大阪自由大学通信11月号をアップしました。
●きのう、須磨離宮公園北側の栂尾山(つがおやま)から横尾山、須磨アルプスを経て東山へ登った。いつもだったらここから南側の山陽電車・板宿駅のほうへ下りてくるのだけれど、今回は北側の妙法寺のほうへ。そこから高取山を登り返して、高取神社の参道を南へ下りてきた。下山したところの住宅街でおじいさんに「どこから登ってこられた?」と聞かれたので「須磨のほうから」と答えると、「ほほー、半縦(はんじゅう)ですやん」と感心してくれた。「いやあ、三分の一縦ですわ」と答えたのだけれど、三分の一どころか、五分の一ぐらいの距離だろう。今日は朝5時から六甲全山縦走大会が開催されている。山歩きを始めた数年前は、慣れればいつの日か、私だって「全縦」できるようになると楽観していたのだが。今は、いくら鍛えたところで自分にはとても無理であると確信してしまっている。ああ、これが年というものか。
11月5日カープ優勝パレードを見物に広島へ行ってきた。午前7時半ごろ広島駅に滑り込む新幹線から見える、駅からマツダスタジアムへの、いわゆるカープロードは、お昼から開催される「優勝報告会イベント」に押し寄せる怒濤のファンたちに埋め尽くされていた。翌日の報道によると、前夜からいい席を求めて並ぶ人が多数いたとのこと。私はこの報告会への抽選にはずれていたので、ともあれ10時からパレードが始まる平和大通りへ急いだ。しかしすでに大通りは3キロ以上にわたって十重二十重に見物客で取り囲まれている。沿道そばの優良スポットは子どもの運動会の場所取り合戦よろしく、日の出前にとっくに勝負はついていた。仕方なく背伸びをしながらはるか遠くから選手たちが乗ったバスの車列を眺めるはめになってしまった。バスを先導するように走るスポーツカーに乗っていた黒田選手、新井選手は見えずじまい。というか、スポーツカーがパレードしていたなんてあとのテレビニュースで知った次第。スポーツカーはいかんでしょ!

16/10/16
アラブ的思考様式
アラブ的思考様式
牧野信也著
●昨日みんぱく主催の〈言葉から文化を考える─「アラブ的思考様式」再考〉と題した、西尾哲夫教授の一般向けゼミナールに行ってきた(ついでに太陽の塔を撮ってきました。万博公園に行くと毎度なぜか撮ってしまうのだ)。深く演題を考えずに参加してしまったのだが、「アラブ的思考様式」とは牧野信也氏の著書(講談社学術文庫・1979年・絶版)のことだった。言語学(アラビア語)的視点からアラブ民族の思考様式を探った内容である。その主張するところを「再考」(批判)するというものであった。この牧野氏の本は読んだことがあるのだが、もとよりアラビア語の知識がないのでほとんど内容は理解できずページをめくっただけである(だから西尾氏が当ゼミナールで牧野氏のどの点をどう批判されたのか、わからずじまいであった)。ただ本書の「まえがき」で紹介されていたエピソードは強烈に今も印象に残っている。本論はわからずともこのエピソードだけでじゅうぶん元が取れたと思えるほど、衝撃的であった。──著者牧野氏が留学先の西ドイツからの帰途、友人を訪ねてシリアのダマスカスに立ち寄る。そこでカバンを置き引きされ、留学中に入手した貴重な文献資料が消えてしまった。茫然自失の牧野青年をみた40過ぎの、見知らぬシリア人男性が「何か困ったことがあるのか」と声をかけてきた。その男性は「あなたを助ける栄誉を与えてくれ」と言って、警察署に同行して必要な手続きを手伝ってくれた。さらには男性宅に連れて行かれ、家族一同から熱烈歓迎を受け、お茶やお菓子、果物が振る舞われ、日が暮れるとテーブルには所狭しと豪華な夕食が並べられた。食後には清潔なシーツが敷かれたベッドまで用意された。心からの歓待で元気づけてくれたわけであるが、翌朝、牧野青年はそのお礼にとわずかばかりのお金を包んで渡そうとした。途端、あれほどに親切でにこやかだった男性がみるみるうちに険しい表情に変わる。「ああ、なんという侮辱!」と叫びながら激怒し、牧野青年はおもてへ荷物とともに追い出されてしまう。扉はぴしゃりと閉じられ、いくら呼んでも扉は二度と開くことはなかった。底抜けの親切と好意から、一転して荒々しい怒りへと駆り立てる極端な感情の振幅。強烈な挿話であった。

16/10/08 「大魔王のお笑い神話(10月号)」をアップしました。
大阪自由大学通信10月号をアップしました。

16/09/18

スリランカで
ビジネスチャレンジ!
●アールイーの新井さんが来阪。昨日、大阪・阿波座にあるスリランカ料理店「シーギリヤ」で昼食を食べながら久闊を除す。料理はバナナリーフに盛られたカリープレート。バスマティ米にトッピングされたさまざまな具材が渾然一体となって……、これまで食べてきたスリランカ料理の中なかで一番の美味しさだったかもしれない。昼間っからビールがすすむ。スリランカで10年近く農業指導してきたJICA専門家の方が以前ここ「シーギリヤ」の料理を激賞されていたことがあったのだが、このたびしっかりと腑に落ちた。もちろんスリランカ通の新井さんも「関東にはこれほど本格的なスリランカ料理を提供するレストランはありません」と、納得の逸品であった。アールイー発行の新刊『スリランカでビジネスチャレンジ!vol.2』(本体1400円)をいただく。一攫千金をねらってスリランカでのビジネスを指南する、珍しい一書。ぜひご一読を。
●大阪編集教室刊行の『花ぎれ76号』(本体200円)が届く。特集は「天王寺 七坂」。このあたりは一度歩いてみたいエリアなのだ。暑さもおさまれば「花ぎれ」片手に出かけてみよう。梅田の「清風堂書店」で販売中。あわせてただ今、教室は第79期生を募集しています。ご検討ください。

16/09/11
大阪自由大学通信9月号をアップしました。
「大魔王のお笑い神話(9月号)」をアップしました。
●やってくれました、広島カープ! 優勝おめでとう。私は1970年代後半の第一次カープ黄金時代(1975年が初優勝)を彼の地で過ごした。1979年の優勝(2度目)の年
は、旧市民球場での試合はほぼすべて観戦したと思う。球場まで自転車で15分ほどのところに住んでいたから夕涼み感覚で足を運んでいた。外野の自由席がたしか500円ほどでなかったか。球場の隣に建つ広島そごうの屋上ビアガーデンからもナイターを見下ろせたなあ。当時を懐かしんで手にしたのが『赤ヘル1975』(重松清・講談社・2013年)だ。じつは刊行と同時に手に入れていたのだが、読んだのはつい最近だ。今夏文庫本になったらしくその広告を見て買っていたのを思い出したのだ。広島の地がああなんとも愛おしい。優勝パレードには赤いユニホームを着てぜひとも駆けつけたい(黒田選手の背番号15のレプリカ版ユニフォームは用意したぞ!)。

16/08/22 「大魔王のお笑い神話(8月号)」をアップしました。

16/08/15 ●12日、鳥取の大山(1710m)に登った。昨年秋に一度登っていたので、少し自信はあったのだが、やはり夏場の山登りは想像以上にきつかった。避難所のある六合目を過ぎたあたりから、数十メートルほど進んでは休憩といったリズムで、息も絶え絶えの尺取り虫の歩み。途中、下山してくる20人ほどのパーティとすれ違ったが、そのなかに「Great Traverse百名山ひと筆書き」の田中陽希さんがいた。嫁サンがすれ違いざま思わず「あっ、田中陽希さん!」と声を出すと、「ありがとうございます!」と振り返って応えてくれた。まったく疲れた様子もなく、軽快な足取りで駆け抜けていった。

16/08/10
大阪自由大学通信8月号をアップしました。
●映画「Behind "THE COVE" 捕鯨問題の謎に迫る」(八木景子監督・日本・2015)を観た。和歌山・太地町のイルカ漁を取り上げた映画「ザ・コーブ(The Cove)」(ルイ・シホヨス監督・米・2009)が話題になって以来、太地町には海外から反捕鯨の活動家たちが大挙して押しかけるようになった。ちいさな町が騒然としている。シーシェパードの連中に日々の暮らしを監視され、海外メディアからは無遠慮に撮影され、一方的なナレーションをつけて町民たちの日常が世界中に悪意を持ってばらまかれてきた。そうした状況を反転させるべく、太地側から撮り返した作品が映画「Behind "THE COVE"」だ。活動家たちが向けてくる驕慢なカメラに対して、八木監督はカメラを対峙させてフィルムを回す。アンチテーゼ版「Making of THE COVE」といったところか。町長、IWC委員、科学者など各界の専門家への取材を通して反捕鯨運動のもつ「怪しさ」をロジカルに暴いていく面白い映画だった。その日、八木監督が舞台挨拶に来られており、上映後、トークショーがあった。そこで紹介されたエピソードのひとつ、この「Behind "THE COVE"」がモントリオール映画祭に正式に出品されて以降、太地町にあれほどに集結していた活動家たちがクモの子を散らしたようにいなくなってしまったというお話。意外な結末に拍子抜けした。

16/07/31 旧著探訪第28回『エジプトないしょばなし』(田中四郎著)をアップしました。
●足かけ28年乗り続けた車をついに廃車にした。1989年製。走行距離284,272km。15年ほど前にエンジンからオイル漏れがあったため一度オーバーホールしたがそれ以降は故障らしきものとは無縁であった。ただ3〜4年ほど前からクーラーが効かなくなり、これを修理するとなると高額な費用がかかることもあり、夏場は窓を全開にして走る。しかし長時間運転は熱中症の恐れあり、年とともに体力の限界もあり、ついに堪えきれなくなってしまった。「モノ」とはいえ、30年近くの悲喜こもごもを一緒に歩んできた思い入れはあり、寂しい。お盆と暮れの年2回しか洗車することはなかったが、お別れの前にきれいに洗って送り出した。

16/07/10
「大魔王のお笑い神話(7月号)」をアップしました。
●「オマールの壁」(2013)というパレスチナ映画を見た。パレスチナ自治区に生きる、反イスラエル活動家の若者たちの、友情と恋愛に仕組まれてくるイスラエル捜査官の「秘密の罠」……。さまざまな伏線が敷かれているのを注意深く読み解いていかないと、見終わったあと???となって、あたふたしてしまうこと必定という前評判を耳にした。嫁サンと「夫婦50割引」でチケットは安く買えてはいるが、とりあえず筋ぐらいは腑に落とせないと損をした気分になってしまう。「ねたばれ注意」の但し書きのある、中東ジャーナリスト川上泰徳氏の「謎解き」を読んでから映画館に向かった。それでも、理解するのにずいぶんと苦労した。

16/07/03
大阪自由大学通信7月号が届きました。
●暑い。梅雨明けしたかのような猛暑が続いている。雲の形も真夏めいてきた。山歩きもこれからはちょっと無理かもしれない。2日(土)は曇りの予報だったので、東おたふく山から六甲最高峰を経て有馬温泉へというルートを歩こうと計画していたのだが、朝の太陽を見てやめた。代わりに「武庫川渓谷の廃線跡ハイキング」に行ってきた。しかし、こちらとて、あやうく熱中症になりかねない熱波であった。

16/06/19


やわらかなアラブ学
田中四郎著
●雨。今日は大阪城西の丸庭園で開催される「国際ヨガDAY in 関西」のイベントに参加する予定だった。ヨガ経験はまったくないのだが、「インドの大魔王」こと大麻豊氏より案内をもらったとき、昨年「第1回国際ヨガの日」のニュース映像を思い出したのだった。面白そうじゃないですか、地球規模で一斉にヨガをするなんて。案内パンフの「持ち物」にヨガマットなるものが掲載されていたのでamazonで入手していた。準備万端だったのに残念。じつは雨天決行なんだけれど、風邪を引いてもアレなんで家でじーっとしている。
●古本で買った『やわらかなアラブ学』(田中四郎著・新潮選書・1992)という本
を読んでいたら、元オマーン国王と結婚した日本人女性の話が載っていた。1935年(昭和10)のこと。神戸税関につとめていた大山清子さん(当時19歳)が、たまたま神戸に滞在していたオマーンのタイムール国王に見初められ結婚を申し込まれる。大山家側は日本に住むことを結婚の条件としたため、国王は退位し、神戸に新居を構える。ところが娘を出産したのち、清子夫人は結核で急逝してしまう(お墓は兵庫県稲美町にある)。結婚生活は3年で終わってしまうのだが、その女の子(ブサイナ姫)はいまもオマーンの王宮内で静かに暮らしているという。ネットでこの一件を検索してみると、今年の2月にフジテレビ系で「アラブ国王と恋物語日本人女性秘話」というタイトルで番組化されていたようだ。だからすでにご存じの方も多いかもしれない。あるいは、東日本大震災に対する海外からの義援金額でこの「結婚」にしばしば言及されたことがあったようで、こっちの流れで耳にされた方もあるかもしれない。国別義援金ランキングによると、第1位がアメリカで約30億円、2位が台湾の約29億円、3位がタイで約20億円、そして4位がオマーンとなって約10億円。ここで「えっ、なんでオマーン!?」という不思議からこの「結婚秘話」にたどり着いたという人も多かったようなのだ。

16/06/12
「大魔王のお笑い神話(6月号)」をアップしました。

16/06/05
大阪自由大学通信6月号が届きました。
●昨日、久しぶりにムジカの堀江さんを訪ねる。店舗が堂島から芦屋に移って以来足が遠のいていた。1階は茶葉の販売スペース、中二階には堂島時代同様に紅茶関連の資料が所狭しと陳列されている。ソファーセットが用意されていて、ここで紅茶が飲める。「何、飲む?」と訊かれて、芦屋への移転を記念して発売された「芦屋プラウド」を所望。メンタームのキャラがきちんと出ているウヴァと、ピーククオリティのヌワラエリヤの清澄な渋みがいい具合にブレンドされた逸品。帰り際、1階のレジで支払いしようとすると、なんと喫茶はサービスらしい。ポットサービスだから2-3杯たっぷりいただいてお代は不要。なんと、まあ。茶葉の購入者へのサービスだそう。あわてて紅茶1ポンドを買い求めた。

16/05/29
近著探訪第41回『これからのマルクス経済学入門』(松尾匡著・橋本貴彦著)をアップしました。今年に入ってなんと3冊目!の松尾先生のご本です。いつもご恵送賜りありがとうございます。近著探訪シリーズも松尾本3連発となりました。
●一昨日のオバマ大統領の広島訪問のニュースを見ながら、「戦争の道義的埋葬」というマックス・ウェーバーの言葉を思った。「(戦争の責任という問題は)少なくとも倫理的には葬られるべきもの」で、そのためには「品位が必要」であるとする。倫理問題が持ち上がるとすれば「双方の品位の欠如を示す」。ウェーバーの『職業としての政治』からの抜き書きであるが、被爆者側からの謝罪要求の声がほとんど聞かれなかったことに、清々しい品位を感じた。「政治的には解決することのできない不毛な」倫理問題に拘泥することなく、核廃絶に取り組んでいこうとするその未来志向に、「将来と将来への(みずからの)責任」について考えることに政治のつとめがあるとするウェーバーの主張に合致した素晴らしいイベントであった、と思う。

16/05/17
「大魔王のお笑い神話(5月号)」が届きました。あわせて「第2回国際ヨガDAY in 関西」のご案内もあります。6月19日(日)です。

16/05/07
大阪自由大学通信5月号が届きました。
旧著探訪第27回『来て見てシリア』(清水紘子著)をアップしました。
●3日。憲法記念日。徳島での「スリランカ料理の会」に出席。過去最高の16名が参加。広島、愛媛からも。毎回新しい人が増えている。キャラが異常に際だった人が多いので刺激になる。夕方から暴風が吹き始め、鳴門海峡大橋では大型の高速バスでも吹き飛ばされそうだった。案の定夜間には全面通行止めになったようだ。危機一髪で帰ってくる。
●5日。こどもの日。阪急芦屋川駅から六甲山最高峰を経て、有馬温泉へ。六甲登山の鉄板ルートを歩く。風吹岩までの登山道は子連れ家族でかなり渋滞気味。そこから北へのルートは空いて歩きやすいが、七曲りの急坂で息も絶え絶え。5時間ほどかかった。もうへとへと。「金の湯」(650円也)で汗を流して、とりあえず立ち飲みバールで生ビール1杯。つぎにお好み屋さんでジョッキ2杯。すっかりいい気分に。

16/04/17


スリランカで
運命論者なる
●「ギョエテとは俺のことかとゲーテいい」という物言いがあるけれど、外国語をできるだけ現地の音に近いかたちで表記しようというのが最近の流れだ。かつてイスラムといっていたのがここんところ「イスラーム」と音引きを入れるのが一般的になった。ムスリムが食べてもOKなハラル食品もハラールと引っ張る。アルカイダはアルカーイダ。イラクのバグダッドは一般的には今もそう呼ばれているが、学術・専門の世界ではバグダードだ。アフガニスタンの首都カブールは、ほんとうは「カーブル」なのになぜか日本のマスコミはカブールと言い習わしている。新聞・テレビがこうした表記を主導しているのでそこが変わらないとなかなか改まらないのかもしれない。もうずいぶん昔の話に「ドーハの悲劇」というのがあったが、そのカタールは現地の文字表記からすると「カタル」のはずだけれどたいてい音引きを入れる。漢字では「華多留」だそうで、こっちのほうがよっぽど現地音に忠実だ。メッカはマッカ、メディナはマディーナへ。これは現在進行中。……と、こんなことを書き連ねたのは『スリランカで運命論者になる』(杉本良男著・臨川書店)を読んでいて、こうした外国語表記について目から鱗の下りがあったからだ。第4代セイロン首相で現コロンボ国際空港の別名にも冠されている「バンダーラナーヤカ」。これはひと昔前は「バンダラナイケ」だった(今もこの表記をけっこう見かける)。ローマ字表記は、Bandaranaike。この最後の「ke」をローマ字読みにして「ケ」とした。でもこの「e」は、ほんとうは曖昧なア音を表す発音記号(eを上下逆さまにした文字)の代用として使われたことが始まりらしい。だから「ke」は日本語の音からすると「カ」となる。同様にスリランカの夏目漱石とも称される作家、Martin Wickramasingheの末尾「he」も、ウィクラマシン「ヘ」ではなく、ウィクラマシン「ハ」だ。小舎刊『蓮の道』の著者名の表記もちゃーんと「マーティン・ウィクラマシンハ」となっているゾ! 上述の事情にはとんと不案内であったが、本書はシンハラ文学の第一人者、野口忠司先生が訳されていたからね。昨年12月23日のこの欄で言及した人類学者Obesekereの最後のkereも「ケレ」ではなく「カラ」だ。「kere」の二つのeは、曖昧なア音の代用表記ですからね。いずれにせよ、ローマ字至上主義者の陥穽です。

16/04/10
「大魔王のお笑い神話(4月号)」をアップしました。

16/04/03
●立命館大の松尾匡先生から新しいご著書『自由のジレンマを解く』(PHP新書)をお送りいただきました。いつもありがとうございます。「コミュニタリアンからリバタリアンへ」が、これからを生き抜いていくよすがとなる! 意外にも思えるそのこころは? 近著探訪第40回『自由のジレンマを解く』(松尾匡著)でそのさわりを紹介しております。
大阪自由大学通信4月号が届きました。

16/03/13


アジアから来る花嫁たち

小さな民のグローバル学
●四国の東祖谷山村(現・三好市)が行政の仲介でフィリピンから花嫁を迎えて今年で満30年になる。1988年小舎刊『アジアから来る花嫁たち』(編集部編)は、その「村の国際結婚」に対してなされた一連のマスコミ報道をまとめた基礎資料集である。資料の収集・整理などにさいしてずいぶんとお世話になった現地のM氏から『小さな民のグローバル学』(ぎょうせい・2016年)所収の論文、佐竹眞明「四国の山村における国際結婚」の案内をもらった。それによると、87年成婚した6組うち2組が今も祖谷に暮らす。90年代以降は、行政の仲介を経ず、エンターテナーとして出稼ぎにきていたフィリピン人女性と祖谷の男性との自立的結婚が6組、また花嫁の妹や姪を紹介する事例も2件あり、そうした「後輩花嫁」6人が東祖谷で暮らしているそうだ。彼女たちの多くは地元の介護施設で働き、限界集落の福祉を支えているという。佐竹氏は論文で彼女たちの日本社会への貢献を高く評価している。あの当時、行政が介在する、過疎の村への、こうした「移民花嫁」に対しては否定的なとらえ方が大勢であった。「花嫁の商品化」という視点である。『アジアから来る花嫁たち』ではその巻頭に、さまざまに指摘されている現状の問題点を認識したうえで、未来に積極的な意義を見いだそうとする「可能性としてのアジア人花嫁たち」(滝本洋平)という論文を掲載している。地域の国際化、多様な価値の尊重、民衆レベルの異文化交流、閉鎖社会から開放型社会へ、などの意義である。「佐竹=2016」からは、そうしたプラスの側面はすでに地域に根づいているような印象を受けた。刊行当時、東京の自然派志向の某書店に営業したおり、移民花嫁を「可能性」としてとらえる本書の姿勢を「ウサン臭い」と拒絶されたことを思い出す。雨後の竹の子のように乱立し始めた結婚ブローカーの片棒を担ぐ輩と思われてしまったのだった……。

16/03/08


漂流怪人きだみのる
大阪自由大学通信3月号が届きました。
●岩波新書のアンコール復刊『モロッコ』(山田吉彦・初版1951年)を買ったら、〈流浪の作家「きだみのる」 彼が見た植民地の姿とは〉という帯文が目に入った。んっ、山田吉彦=きだみのる!? あの、「気違い部落」の…?
『気違い部落周游紀行』(冨山房百科文庫・1981年)を探し出してぱらぱらめくると、巻頭の「解題」で、米山俊直氏が「山田吉彦」のこと、「モロッコ紀行」のことをちゃーんと案内してあった。この本、買っただけで読んでなかったのかな(こんなのばっかり!)。ともあれ、ひとつ賢くなったわい。…と、こんどは、嵐山光三郎著『漂流怪人・きだみのる』(小学館・2016年)という本の刊行を知った。なんだかよくわからないが、「きだみのる」回顧ブームなのか…。早速入手し一読。おかげで、「モロッコ」「気違い部落」の流れがよーくわかった。さらにはへーっ、そうだったのかという、びっくりの事実の連続だった。周知のことなのかもしれないけれど以下記す。
 きだの放浪の旅に連れられて、小学校にも通っていなかった娘を三好京三が養女として引き取る。当時三好は作家志望の小学校教員であった。その後(きだの死後)、三好は小説『子育てごっこ』を発表。きだみのると娘をモデルにした小説である。きだは人間失格の、醜悪な老人として描かれ、娘のほうは傲慢で可愛げのない子どもとして登場する。この作品で直木賞を受賞し、念願の作家デビューとなった。しかし三好と娘とのあいだの確執やら不信が表に出てくるにつれ、格好の週刊誌ネタとなって世間を騒がせる。そういえば、週刊誌の見出しに「直木賞作家・三好京三」という活字がスキャンダラスに踊っていたことをぼんやりと思い出す。80年代半ばのこと。

16/02/27
「大魔王のお笑い神話(3月号)」をアップしました。
●トラベルミトラの大麻氏より講演の案内が届きました。「インドを学ぶ(プルニマ会の集い)故古坂紘一先生を偲ぶ会」です。3月12日(土)午後です。

16/02/21


子規の宇宙
●『図書』1月号(岩波書店)に「詩の愉しみ方」というタイトルで、詩人の谷川俊太郎さんと工藤直子さんの対談があった。そのなかで子規の「いくたびも雪の深さを尋ねけり」という句の解釈について、病床にある子規の状況をふまえて読む必要があるのか、あるいはそんなことを知らなくてもいいのか、との工藤氏の問いに、谷川氏は自由に解釈したらいいのではと答えている。「子規は寝込んでいるからどこへも行けない、自分が知らない土地からの便りに接すると、今そこでは雪が降っているのだろう、と想像する。だから雪は深いのか、どうなのか?と訊いている」と。うーん、これだとスキー場の雪の深さを尋ねているみたい。子規29歳、明治29年の句。その年、脊椎カリエスと診断され、ほとんど寝たきりである。まさに「病床六尺」に蟄居している。東京・根岸の家。寝間の障子を隔てた向こうには雪が降っている。庭にどのくらい雪が積もったのか、自分で起きて確かめることさえかなわない。好奇心旺盛な子規が何度も何度も、看病に当たっている妹の律(あるいは母の八重か、弟子の虚子かもしれない)に「どのくらい積もった?」と問いただしている。遠く離れた地方の雪などではなく、ほんの数メートル先の、庭の雪。それが自分の目で見られないもどかしさ。長谷川櫂氏の『子規の宇宙』(角川選書)に「文学者は嘘を天職とする人々なのだが、正岡子規は(略)事実を文学にしようと企てた」とあった。そして子規が求めた「即事」という手法は、「写生という方法さえ超越した子規の生き方にほかならなかった」。であれば子規の句は、読者に自由な解釈が委ねられているとはとても思えないのだ。やはり病床の子規を知るべきだろう。読者を拘束する、こうした「不自由さ」はあってもいいんじゃなかろうか……。

16/02/14
●今年も「スリランカ料理を楽しむ会」が催されます。自由参加で、申込などは不要です。集まって、ただカレーを味わうといったもの。お気軽にご参加ください。
・日時:5月3日(火/祝)11時45分〜13時30分
・場所:スリランカレストラン「マータラ」
 徳島市城東町2-1-31(城東大橋西詰北側)電話088-678-6937
●前回アップした近著探訪第39回で日銀のマイナス金利をGood job!と評してしまったがその後、経済指標はとんでもない数値になってしまっている。いやはや、軽率でお恥ずかしい。ところで、そのコーナーで取り上げた『この経済政策が民主主義を救う』(松尾匡著・大月書店)では、提言する経済政策が、いわゆる右派・保守である安倍首相の第一と第二の矢(金融緩和・政府支出の拡大)と同じであった(いや、それ以上に、著者の求めるところは、政権が推し進めているものに比べて、質量ともにもっと過激!?)ことから、左派・リベラルの著者として、立場上誤解を招かぬよう、ずいぶんと気を遣いながら論を展開されているなあとの印象をもった。版元が老舗左派系の大月書店であることからして、著者の立ち位置を担保してくれてはいると思うけれど。ともあれこのあたりの事情が松尾ファンの一読者としては興味深いところではあった。さて、さて、そうした右派・左派の関係においておもしろい記事があった。題して「日本の経済政策は、なぜ右派と左派でねじれているのか?」(Newsweek日本版)というもの。現下の日本では、右派がリベラルな経済政策をとり、左派が保守的な経済政策をとる。国際標準では、お金をたっぷりと流していくことで景気浮揚を目指すのが、左派がとるリベラルな政策で、公共投資を抑制し財政規律を優先するのは保守がとる政策。日本と世界とでは政策と思想的立ち位置がちょうど逆になっているんですね。ということで、本書の内容は、世界標準で経済政策を考えることがデフレ脱却ヘの道であること、決してアベノミクスをヨイショするものじゃないよ、というものであった。私のばあいは、右派でもなく左派でもなく、ただたんに馬鹿の一つ覚えよろしく、「デフレにはケインズ」と教科書どおりにとらえているだけ。昨晩、NHKスペシャル「司馬遼太郎思索紀行」を見ていたら、「無思想の思想」という、明治の日本人を評した司馬さんの言葉が紹介されていた。おっ、これはいい! 飛びついてしまいました。「普遍」を強く求める姿勢といったらいいのでしょうか。平たく「職人気質」といいましょうか。経済政策は、今は亡き野坂昭如さんが唱えていた「右も左も蹴っ飛」して、イデオロギーとは無縁にテクニカルな理路(経済学の巨人が教えるところ)に従って粛々と遂行していくことが、結局は多数の幸福につながるように思うのであります。

16/01/31
「大魔王のお笑い神話(2月号)」をアップしました。シク教のシリーズは今回が最終回です。次号から新しいネタになります。ご期待ください。
●過日、立命館大学・松尾匡先生の新しいご著書が版元の大月書店から送られてきた。松尾先生、いつもありがとうございます。早速に拝読。左派リベラル派の著者がその立場から、喫緊とるべき経済政策の要諦を提言した一書です。副題は「安倍政権に勝てる対案」。夏の選挙までに読んでおこう。近著探訪第39回『この経済政策が民主主義を救う』(松尾匡著)で紹介しております。

16/01/11
「大魔王のお笑い神話(1月号)」をアップしました。
●今年初の山歩きに昨日摩耶山に行ってきた。JR新神戸駅裏側から山に入っていって、市ヶ原を経由して稲妻坂、天狗道を抜けて掬星台(頂上)まで。ガスバーナーを持参してお湯を沸かしてお昼はカップヌードル。これがめちゃくちゃおいしい。食後はインスタントコーヒー。これまた最高。これを楽しみに最近は山歩きしているといえるほど。下山は青谷道でJR灘駅へ。5時間ほどかかった。へとへと。やっぱり摩耶山は大きい。

16/01/01
●あけましておめでとうございます。本年もどうぞよろしくお願いいたします。
「全国観るなび」(日本観光振興協会)で、「初日の出」ランキング全国1位の兵庫県加古川市の高御位山山頂(304m)から初日の出を拝んできました。午前6時の登山道は数珠つなぎで渋滞気味。頂上は人、人、人で大混雑。おまわりさんも交通整理に忙しそう。名物の断崖の岩場は滑落が恐ろしくて近寄れない。安全な場所を確保してご来光を望んでいると小さく鳥のようなものが見えた。徐々に近づいてくるにつれ、かすかにエンジン音が聞こえる。背中にファンを背負ったモーター付きパラグライダーが1機、こちらに向かって優雅に飛んでくるのだった。ご来光を拝んでいるはずが、なんだかパラグライダーのおっちゃんを拝んでいるような変な気分である。山頂を周回して去っていった。

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