1軒は6000円の値段。もうひとつは3000円。価格ドットコムではないが、古本屋さんの立場からすると、こうしたネット環境では商売がやりにくだろうな。迷わず3000円に注文を出す。 しばらくして受注確認のメールが届いた。一安心ではあるが、そのメールの文末に「ただいまネット担当者が長期不在のため在庫確認と発送が×日になるので諒承願いたい」とあり、1週間ほど先の日にちが記されていた。一抹の不安を覚えるが、親子で経営している古書店でコンピュータ担当の息子が旅行に出かけているか何かで対応できないんだなと勝手に想像する。ゆっくり旅行してきてちょうだい。やさしい気持ちでお帰りをお待ち申しあげていた。 ……なのにだっ。 1週間後に「先日既に売れてしまい在庫がないので諒承されたし」とのメールが届いた。がっかりである。ネットで商売するには、迅速に対応するのが原則でしょ。「売り違いごめん」の許される時間的スパンはもっと短いはずだ。まして古書を取り扱う現場では。一気に怒髪天を衝くモードに入ってしまった。(大人げない…) 怒り収まらず、googleで検索をかけ、あてどなくネットを漂流する。と、拾う神あり。オンデマンド印刷で送ってやろうじゃないかというページにたどり着いた。大日本印刷が運営してる『ウェブの書斎』。ここでデータ化されている書籍は1冊から印刷して送ってくれるのだ。幸いにして、『望郷と海』が対象リストに含まれており、検索で引っかかったのだ。税込み3255円。釣り逃がした古書とほぼ同じ値段。 話にはよく聞いていたオンデマンド印刷であるが、どのような仕様で仕上がってくるのか興味があった。手元に届くまで1週間ほどかかると書いてあったが、数日中に代引きで届いた。さすが、大日本。迅速である。 本文は書籍用紙で、活字は秀英明朝体。美しい組版。印刷機とコピー機の中間のクオリティと耳にしていたが、印刷との違いを指摘できる人はそういないのではないだろうか。ただ、ひとつ難点。表紙である。表紙の用紙がぺらぺらなこと。おそらく本文は四六判相当で70キロぐらい。効率性からか、表紙も同じ紙厚のものが使用されている。できれば130キロ前後のものがほしかった。鞄に入れて持ち運びしているあいだに、かんたんに角が折れ曲がったり皺ができてしまった。あと数百円高くてもいいから、表紙は少し重量のあるものを。 |
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