ものがたり宗教史 ■浅野典夫著・ちくまプリマー新書・2009年■ |
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著者は、大阪の高校で世界史の授業を担当されている教諭である。じつはこの先生が主宰している「世界史講義録」というウエブサイトがあって（すでに評判のサイトになっているのでご存じの方も多いと思う）、私は数年来、このサイトの閲覧者である。授業の「実況生録」といった内容で、受験科目として必要なければ、とんと興味を示さない（であろう）生徒たちに向けて、興味を持たせようする、先生ならではの工夫が随所にちりばめられていて、しかも受験に必須のポイントをもきちんと押さえたもので、これだと勉強も楽しいだろうなあと思う。私のような中高年であっても、高校生に戻って「文明の誕生」あたりからおさらいができて大変便利なサイトなのである。高校時代、私もこういった先生に教えてもらっておれば、もうすこしなんとかなったかもしれんのに……、との思いがしきりである。 スタートが1999年4月で、現在「第106回日本の開国」（2009年8月）までアップされている。さらにもっと深く知りたくなったら、テーマにそった適切な本の紹介もあって、ブックガイドとしても私は重宝している。高校生の娘にもこれまで何度か、期末試験対策用に関連授業の部分を印刷して渡したこともあった。 最近、高校の歴史教科書を大人向けに編集しなおしたバージョンのものが一般図書として数多く出版されているが、このサイトの内容を一冊の本にまとめることができたらどんなに面白いだろうと以前から思っていた。一般教養向けで、かつ受験対策用にもなる一冊。大人も受験生も楽しめる本。しかし膨大な量である。といって、編集で刈り込んでいっては、ただの無味乾燥な受験参考書になってしまうし、「実況生録」がもたらす肝心の、ネタ繰り・脱線・雑談がなくなってしまう。といってベタで起こして上下2巻ではこれまた不評だろう。 ……などと思っていたら、筑摩書房からこの本が出た。新書版で、すっきり手に取りやすいコンパクト版。宗教に絞って、この先生に書き下ろしてもらっている。なるほどなあ、こういう手があったか……。うまいなあ、とつくづく感じ入った。 2009.10.12（か） |
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