■第7回■■大使館のお仕事■



(幻冬舎文庫)



(徳間文庫)
 昨年12月の新聞に発表された来年度国家予算は、約82兆円。そのうち、税収でカバーできる金額が半分の41兆円、残る半分は国債などの、いわゆる借金会計という。借金はあってもいい。私も借金がある。借金があるから頑張ろうと思うのだから。うん。だけど問題はその割合だ。50%! 他国との比較をすれば、英国では予算の99.8%が税収でまかなわれているそうだ。英国病なんて遠い昔話。すごく健全なんだと改めて認識した。米国が91%、イタリア86%と続く。
 カネを使ってこそ景気浮揚があるという、ケインジアンからすれば、支出は減らせないということなのだろうが、それにしても一般人の感覚からすればこれは禁治産者ですね。収入の倍近くの支出を続けるニッポン。家族の中にそんな人間がひとりでもいたら、あっという間に一家破産ですわね。たしかに国家レベルの話になれば事情が違ってくるのでしょう。投資も必要でしょう。それはわかる。しかし胸が悪くなるほどの無駄もいっぱいいっぱいあるぞ。と、行革担当大臣のような言を弄するのは、久家義之著『大使館なんかいらない』『呆然!ニッポン大使館-外務省医務官の泣き笑い駐在記』の2冊を立て続けに読んだからだ。ああ、思い出すだけでも気分が悪くなる。借金漬けの国家予算に寄生して、湯水のごとく自分たちの飲み食いに使いまくり、私腹を肥やすことにのみ奔走する外務官僚の面々がいっぱいいっぱい登場する。
 マスコミで話題になった「機密費」。機密なんてそれっぽく聞こえるけれど、そんなたいそうな活動なんてしていないぞ! 著者は「機密費問題の本質は、それを専門に扱う諜報のプロが外務省にいなかったことである。専門に扱える人間がいないから、そのカネが流用された」と冷静に記している。10年前の湾岸戦争時、サウジアラビアの大使館に勤務していた著者は大使館独自の(外務省)ルートからの情報は皆無であったという。CNNテレビと現地在住の日本人からの情報が唯一の手がかりであったそうだ。なんだこりゃ!旅行者感覚じゃないか。55億もの機密費を使ってどんな情報を入手していたのだろう? 諜報のプロといわんばかりも、外交のプロといわれるような人物はどこにもいない。カネと名誉にしみったれた俗物ばかり。ところで大使館では機密費なんていう用語はないのだそうだ。報償費というそうな。なんだこりゃあ!
 不快になること100%のエピソード満載の2冊。ぜひご一読を。新年早々胸が悪くなること保証します。(平七丸)

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